JINSの「自分を知る」センサー付きメガネが見据える働き方改革(ダイヤモンド・オンライン)



 目の前の物を「見る」のではなく、自分の脳や体の状態を「知る」ことができるメガネ──。

 従来のメガネの定義を根本から覆したのは、メガネメーカーのジンズが開発したJINS MEME(ジンズ・ミーム)だ。「メガネを視力矯正の道具としてではなく、ヘルスケアのデバイスとして開発し提案した」(同社JINS MEMEグループ マネジャーの井上一鷹)のである。

 ジンズ・ミームの仕組みはこうだ。鼻の当たる部分に搭載されたセンサーがまばたきの回数や黒目の動く速さを検知し、耳の当たる部分に搭載されたセンサーが体の傾きを読み取る。それらのデータがスマートフォンの専用アプリにリアルタイムで送信されて解析され、脳や体の状態を「見える化」して知らせてくれるのだ。

 まばたきの回数からは集中の度合いが分かる。平常時は1分間に20回程度だが、集中しているときは3~4回になるという。黒目の動く速さからはリラックスの度合いが分かる。リラックスしていると黒目の動く速さは一定に保たれるが、例えば眠くなると動きがゆっくりになる。体の傾きからは集中の度合いや健康状態が分かる。姿勢が悪いと集中は長続きせず、認知症の人は後傾気味の姿勢になりやすいという。

 そもそも、なぜメガネメーカーのジンズが、物を見るメガネではなく、自分を知るメガネを開発しようと考えたのか。

● 開発の始まりは頭が良くなるメガネ

 時計の針を巻き戻した2011年、ジンズ社長の田中仁は、ニンテンドーDSの「脳トレシリーズ」で有名な東北大学加齢医学研究所教授の川島隆太を訪ねていた。メガネを単なる視力矯正の道具ではないものとして再定義したいと考えていたからだ。

 「頭の良くなるメガネを作りたい」──。そう切り出した田中に、川島は思ってもみない角度から球を投げ返してきた。

 「メガネの強みは、パンツの次に身に着けている時間が長いことだよね」。川島は、目の動きをメガネで検知することで、認知症予防に役立てることができないかと考えていたのだ。

 これがジンズ・ミームの始まりだった。

 当時、外資系コンサルティングファームで総合電機メーカーの新規事業戦略を描く仕事をしていた井上は、悩んでいた。3カ月や半年間、外部の人間が入って戦略を立てても、結局形にはならない。「自分の力でイノベーションを起こしたい」──。そんな思いが募り転職を決意した。

 コンサルタント時代の経験から、井上は大企業でイノベーションを起こすことの難しさを身に染みて分かっていた。そんな井上に転職エージェントが勧めたのはIT系のベンチャー企業だった。ほぼ入社することが決まった段階で、ジンズの田中からエージェント経由で連絡が入った。「今日、18時半から空いているから来てくれ」。

 オレはあんたの部下じゃないぞ、と思いつつも井上は田中を訪ねる。会って5分後には「うちに来い」と言われていた。田中は内定をもらっていた会社の社長をよく知っていた。「賢いヤツの下に賢いヤツが行っても伸びない。オレみたいなバカの下の方が自由にできるぞ」。この一言で井上は落ちた。

 こうして井上は12年1月に入社後、社長室や商品企画部門を経てR&D室を立ち上げ、ジンズ・ミームの事業開発担当となった。

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