上がり始めた米国長期金利は警戒信号なのか(会社四季報オンライン)



 今年の株式市場は、絶好のスタートを切った。昨年から何度か指摘しているが、市場環境はこのうえなく良好である。それでも、潜在的なリスク要因として、中国経済動向と米国長期金利の推移に注意を払うべきであると前回書いた。今回は、そのうち米国長期金利について見ていこう。

 これまた何度か指摘していることだが、現在の株高は世界的な低金利に支えられている。一見割高にみえる株価水準も、現在の低金利環境が安定的に続くという前提であれば必ずしも割高とは言い切れない。だから、株高が今後とも続いていくかどうかは、今の金利環境が継続するか否かにかかっている。それを占ううえでもっとも注視すべきは米国の長期金利の動向である。

■ 「経済好調=インフレ率上昇」が通用しない!? 

 これほど長期間にわたって米国経済の好調が続き、雇用環境も極めてタイトなのにもかかわらず、米国の長期金利はなぜ低位で安定しているのだろうか。グラフを見ると、2年金利は政策金利の緩やかな引き上げに伴ってわずかに上昇しているが、10年金利は低水準に張り付いたままで大きな動きを見せていない。これはFRBのイエレン現議長やパウエル次期議長が「謎」と呼んでいる問題である。

 イエレン氏やパウエル氏をはじめ、世界の金融当局の幹部クラスはすべからく、「景気が拡大して雇用がひっ迫すればインフレ率が上昇し、したがって長期金利も上昇する」という常識の中で育った世代だ。かくいう私自身も、そうした常識が頭に染みついている。

 問題は、その常識に反する「謎」こそが今や常態となっていることである。先進国経済のインフレ率と長期金利は、すでに数十年にわたって低下トレンドをたどっている。これは経済のグローバル化とデジタル化が物価上昇を抑え込むという構造要因によって生じた現象であり、それが新常態(ニュー・ノーマル)になっていると考えられる。

 もっとも、今でも経済が好調ならインフレ率が上昇するという関係性が完全になくなったわけではないのだろう。だが構造的にインフレ率の上昇が強く抑え込まれているために、その関係性は明確には表れにくくなっている。つまり、経済が好調でもインフレ率が上昇しないことは、「謎」というよりも、現在の世界経済の構造そのものだと考えるべきなのである。

 だとすれば、インフレ率が急上昇して、それに伴って長期金利が本格的な上昇トレンドに入り、低金利環境の継続を前提に上昇してきた株価が暴落する、というシナリオは必ずしも蓋然性が高くないと考えていいだろう。

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