歴史的な安定相場2017年の次に来るのは・・・(会社四季報オンライン)



 今年の相場を一言で表すなら、「低ボラティリティ(価格変動率)」ということに尽きるだろう。

 日経平均の日中値幅率や、一日当たりの騰落率の大きさを見ると、ほぼ過去最低水準で推移している。

 それを受けて、以前にも掲載した投資家の株価変動率の予想を映す日経平均ボラティリティ・インデックス(VI)も記録的な低水準まで低下している。

 これは日本だけではなく、世界中の主要市場で共通して見られる現象だ。さらにいえば、国債(長期金利)や為替など、株式市場以外でも歴史的ともいえる膠着状態が続いている。

 こうした世界的、市場横断的な低ボラティリティは、株価の下支え、あるいは押し上げ要因となる。ボラティリティが低いということは、市場が安定していて波乱が起こりにくいことを意味している。そうした環境では株などのリスク性資産を保有するリスクが低下していくので、リスク性資産に対する投資意欲が高められる効果が生まれるのだ。9月以降に見られた力強い株価上昇は、ファンダメンタルズの好調さもさることながら、低ボラティリティに支えられた投資家のセンチメント改善が大きく寄与していることは間違いないだろう。

 波乱らしい波乱もないままに上昇を続けた株式相場に比べると、為替は、ドル/円で110円台前半を中心にした狭いレンジ内で推移し、ほとんどトレンドらしいものがないまま方向感のない動きに終始した。これは、米国でFRBによる政策金利の引き上げが行われる一方で、低インフレを背景として長期金利がほとんど上がらなかったことを反映している。長期金利が低位にとどまって安定している限り、株価にはプラスとなるが、為替は動きにくくなる。それが、為替と株価のデカップリングの背景となっている。

 やや後知恵的になるが、今年の相場環境を振り返ってみると、銘柄選びの巧拙はさておいて、株をバイ・アンド・ホールドし、できれば下がったところでは着実に押し目買いを入れることができれば非常に安定した利益をあげられたはずだ。

 もっとも現実には、売るべき理由がさして見当たらないとしても、ポジションをホールドし続けることはなかなか難しいことである。しばらく上昇トレンドが続くと、株価の割高感が感じられるようになり、利益確定を急ぎたくなってしまうからだ。「相場のトレンドは、人が思う以上に大きく長く続く」という相場の法則は本欄で以前執筆したが、今年はまさにこの法則がそのまま表れた1年だったといえる。

 では、この歴史的ともいえる低ボラティリティの相場環境はいつまで続くのだろうか。

 今のところ、こうした相場環境を大きく変えてしまうようなリスク要因は見当たらない。来年の正月は、突発的な地政学リスクでもない限り、枕を高くして寝られるのではないだろうか。

 だが、歴史の教えるところでは、相場の安定はいつまでも続かない。日経平均の相場変動率は過去に2度、1980年代末と、2000年代半ばに大きく低下した。そのあとに、バブルの崩壊(1990年)や、リーマンショック(2008年)が起きている。

 相場が安定していればいるほど、投資家はリスクへの備えを怠りやすくなる。ボラティリティ・インデックス(予想変動率)の低下は、投資家がリスクをほとんど意識していないことの裏返しだ。そこに、予想外のリスクが浮上すると、市場はそれまでの前提を失って乱気流に巻き込まれる。

 次回、2018年を迎えるにあたって、今考えられるリスク要因を少し整理してみることにしよう。

 田渕 直也(たぶち・なおや)/1985年、一橋大学経済学部卒業。日本長期信用銀行(現新生銀行)で主にデリバティブのトレーディング、ポートフォリオマネジメントに従事。UFJパートナーズ投信(現三菱UFJ投信)債券運用部チーフファンドマネージャーとして、社債やストラクチャード・プロダクトへの投資運用体制を構築。『ファイナンス理論全史』、『投資と金融にまつわる12の致命的な誤解について』など著書多数。現在、ミリタス・フィナンシャル・コンサルティング代表。

※当記事は、証券投資一般に関する情報の提供を目的としたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。

田渕 直也



【関連記事】


こんな記事もよく読まれています



コメントを残す