始まりは道端で漏らした“うんこ”――「排泄ビッグデータ」が介護現場に変革をもたらす(後編)



 排泄を予知するウェアラブルデバイス「DFree(ディーフリー)」の開発で、介護施設を中心に世界30カ国以上から問い合わせが相次いでいる日本のベンチャー企業、トリプル・ダブリュー・ジャパン。しかし、意外にも同社代表取締役の中西敦士氏がDFreeを開発しようと思った最初の理由は、高齢社会を見据えたものではなかった。前編では、DFreeの特徴について紹介した。後編では、介護施設での実証試験の様子や中西氏が起業するに至った“予想外の理由”、資金調達に奔走する様子などを紹介しよう。

●NEDOなどから巨額の開発資金を獲得

 尿検知タイプと便検知タイプの2種類ある排泄予知デバイス「DFree(ディーフリー)」のうち、優先的に開発が進められたのは尿検知タイプ。その実証試験は、2015年8月に実施された千葉県鎌ケ谷市にある特別養護老人ホーム「鎌ヶ谷翔裕園」を皮切りに、16年3月実施の東京・品川にあるサービス付き高齢者向け住宅「ケアホーム西大井こうほうえん」、そして16年12月から17年1月にかけて実施された、神奈川県川崎市の住宅型有料老人ホーム「福寿かわさき高津」、介護付き有料老人ホーム「SOL 星が丘」、特別養護老人ホーム「みんなと暮らす町」へと続いた。

 特に川崎市での実証試験は、パラマウントベッドなど大手企業との共同プロジェクトとなった。この背景には、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)や川崎市による強力な支援があった。

 実証試験に先立つ16年2月、トリプル・ダブリュー・ジャパンはシード期の研究開発型ベンチャーを対象にNEDOが公募した助成事業の1つに応募し、見事採択されたのだ。これにより、NEDOから最大7000万円の助成金を受けることができたのに加え、NEDO認定のベンチャーキャピタルからも最大5000万円の資金調達を実現した。さらに同年7月には、台湾の鴻海(ホンハイ)精密工業のグループ企業などから総額約4億円、みずほ銀行と日本政策金融公庫から最大1億円の出資が決まった。

 2014年5月の米国での法人設立からわずか3年足らずで、驚くべき躍進ぶりだ。

 そもそも実証試験を行うことになったのは、15年2月にインターネット上でDFreeに関する記事が掲載されたことが大きい。これをきっかけに、全国各地から「早く製品化してほしい」「うちの介護施設に導入したい」といった熱いメッセージが連日のように届くようになった。

 「世の中にはこんなにも排泄に困っている人が数多くいるのかと、正直言って驚きました。同時に、DFreeは社会的に大きな意義のある製品であると強く認識し、1日も早く提供したいという気持ちが強まりました」と中西氏は語る。

 熱いメッセージの送り主は国内だけでない。世界30カ国以上から問い合わせが相次いでいるというのだ。昨年はフランス最大の介護施設から「DFreeを今すぐ導入したい」という熱烈なラブコールを受け、急遽フランスに出向いたという。現在、17年夏の導入を目指して調整しているとのこと。

 「やはり欧州など高齢化が進んでいる先進国からの問い合わせが多いですね。珍しいところでは、イタリア・シチリア島の南に位置するマルタ共和国の方からもメールをいただきました。それだけ排泄は世界共通の切実なテーマなのだということでしょう」と中西氏は語る。

 このように、超高齢社会に向けて、人々の切実なニーズを的確に読み取り、事業を着実に前進させているように見える中西氏だが、実はDFreeは最初から要介護者を対象に開発を目指したものではなかった。むしろ介護分野は、DFreeの開発を進める中で知った大きな潜在市場だったのだ。




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